日本の国力は下り坂?
1.似非 銀座のにぎやかさ
お天気に誘われ久しぶりに銀座に出かけました(11月22日)。銀座駅からおもて通りに出ると、どのショウウィンドウもクリスマス気分を盛り上げていました。写真1はティファニーのデコレーションです。他にもブルガリ、ルイ・ヴィトン、ウブロ(写真7参照)などなど欧米のファッション関係が目立ちました。
写真1 ティファニーの壁面飾り 平和のシンボル、鳩で埋め尽くされて います。 | 写真2 伊東屋のステンレスビル 間口は8メートル(kosukety blogによる)。 |
和光やミキモトの店構えはさすがですが、飾りつけは欧米の企業に比べてメッセージ性に劣ります。
多くの老舗は看板だけになっていたり、残っていても建物の間口が狭く見劣りします。日本の経済は活力を失いつつあるのではないかと心配になってきました。
一例を挙げると、明治37年(1904年)に創業した伊東屋文具店のステンレスビルは間口の大きなティファニーとブルガリの両ビルに挟まれ、貧弱に見えます(写真2)。
伊藤勝太郎が開店した当時のミニチュアが店内にあります(写真3)。店名は「和漢洋文房具・STATIONERY」、商号は「伊東屋」と「ITOYA」とあります。「和漢洋」には勝太郎の並々ならぬ意図が、そして「STATIONERY」と「ITOYA」からは欧米への強いあこがれが感じられます。しかしながら明治の半ばに英単語「STATIONERY」を理解できた人は何人いたのでしょうか。
一度も海外に出たことのなかった勝太郎が出店に当たり、店名や商号に横文字を使ったのはその2年前に欧米視察に出かけた渋沢栄一の助けが大きかったようです(Wikipedia : 伊東屋)。
しかし、伊東屋は万年筆などの筆記用具にこだわるあまり、ワープロなどIT絡みの新分野への展開は見られませんでした。勝太郎の気宇壮大な初心は雲散霧消してしまったかのようです。
写真3 創業当時の伊東屋和漢洋文具店(明治37年(1904年))
2.予備校の繁栄
自由が丘は東横線と大井町線とが交差していて交通の便がよく、閑静な住宅街に囲まれた安全な街です。最近、大きなfloorの建物が立つと予備校や塾の入ってくる場合が多く見られます。その主たる資金源は小、中、高、浪人生の家庭です。目指す学校に入るために費やす時間と努力は甚大です。その分、感性や独創性を自由に育む機会が失われます。公立、私立を問わず、日本の教育は一体どうなっているのでしょうか。
中学受験の大手、四谷大塚は12月1日に自由ヶ丘校舎を開校します(写真4)。小学校の1年生から6年生までが対象です。キャッチフレーズは「でてこい、未来のリーダーたち。」です。こういう口触りのいい宣伝にのせられて小学生が入塾します。
写真4 四谷大塚の新校舎(左) | 看板の拡大写真(右) |
キャッチフレーズは「でてこい、未来のリーダーたち。」
塾の良否は難関中高校に何人入学させたかで評価されます。塾は難関校の入試を分析し、効率よく回答する手ほどきを教えることになります。本来、未来のリーダーたちに求められる教養や見識の養成は受験一本鎗の勉強からは得られません。
自由が丘には塾だけでなく大手予備校の駿台や河合塾も立派な校舎を構えています。
最高水準の英語教育を銘打った、小中高校生対象の塾、J PREPもあります(写真5)。難関校の英語試験にそなえたり、英語圏の大学への入試にそなえたりするための塾です。かなり本格的な英会話を目指しているようです。
個人的な体験*では、日本語で自分の考えをしっかり表現できるのが先決で、その前に英会話を習っても効率が悪いと思います。高校までは従来の勉強法で文法や語彙、そして読み書きをしっかり身につけることです。基礎がしっかりしていれば話す、聞くは必要になってからでも遅くありません。
写真5 英語塾J PREP の建物(左) 道路に面したウインドウ(右)には「Children’s Thesaurus」、「English Grammar」、「World English」など本格的な英語の本が並んでいます。
*米国への留学を控え、修士2年のとき半年ほど週3回日米会話学院に通いました。各回2時間ほどですが、教室では英語漬けでした。そこで発音をしっかり教えてもらったことは大いに役立ちました。英語には数多くある母音**やRとLの発音、ヒアリングは徹底的に訓練されました。
修士課程をおえ、米国の大学院に留学しました。はじめは授業についていくのがやっとでしたが、半年もするとノートをとるのもさほど苦痛でなくなりました。英語で話している夢さへ見るようになりました。
**日本語には母音が5つしかありませんが、数え方にもよりますが複合母音を含めて22もあります。
予備校や塾での合格一本槍の勉強では「未来のリーダーたち」は育ちません。経済産業省の「未来人材ヴィジョン」(2022年5月)によると「将来の夢を持っている」「自分で国や社会を変えられると思う」「自分の国に解決したい社会課題がある」と感じる日本の若者は他国に比べ圧倒的に少ないのです。小中高生たちの才能を伸し、自信を持たせる学校、それはどのような学校であるのかを国民全体が共有しなければ学校改革は進みません。塾や予備校に任せておくわけにはいかないのです。岸田総理しっかりしてください。
3.国民の負託に応えない国会議員
国会審議の形骸化に関するインタビュー記事が朝日新聞に取り上げられています(2022年9月17日)。識者は只野雅人(憲法学者)、野中尚人(政治学者)、上西充子(国会パブリックビューイング代表)の3人です。指摘されている問題点はほぼ3人に共通しています。審議の形骸化はそれほど深く国会を蝕んでいるのです。
議員は国会で「討論と説得」を尽くして合意を形成していくことが求められています。その機会が国会では失われているというのです。その原因は政府が国会に提出する法案を閣議で決定する前に、与党内で事前審査する慣行があるからです。この慣行は自民党の長期政権下で確立された制度で、法律による根拠付けはありません。この慣行のため議員たちの議論する姿は国民の目に届きにくくなっています。国会では多数決のごり押しです。せっかく手にした民主主義が機能不全に陥っています。
こういう慣行下では仲間の議員を評価する材料にもこと欠き、人材の適材適所は絵に描いた餅となります。
岸田内閣(閣僚24名)はこの一か月間で3閣僚が辞任する事態になりました(山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相)。総理と言えども閣僚の能力や人柄を適切に評価することができなかったからです。
議員の国会活動が国民の目に届かなければ、議員は選挙の票まとめに奔走することになります。落選すればただの人になってしまうからです。挙句の果ては旧統一教会の甘い誘いに乗せられてしまいます。
終わりに
私は戦前、戦中、戦後を生きてきた86歳の枯れすすきです。上で述べた3点は枯れすすきのささやきです。一市民が肌で感じ取った警告です。
元気の出ない話しが続きました。気分転換。ひょうきんなハコフグの表情はいかがでしょうか(写真6)。歯医者さんの待合室にあったナショナル ジオグラフィック(日本版、2021年10月号)に載っていたのをたまたま目にしました。インドネシア沖の夜の海を漂う若いコンゴウフグです。外形はフクロウのようにも見えます。無防備に見えますが粘膜にはフグ毒が含まれています。
丸みを帯びたお腹には6角形の連なった模様が目に留まります。雑誌には模様の説明はありませんでした。フグのお腹が膨らんで破裂しないよう強化している網目ではないかと勝手に想像しています。魚である証拠に可愛い尾ひれがちょこんとついています。
写真7はいま日本を喜ばせたり、がっかりさせたりしているサッカーに絡んだ飾りつけです。FIFAワールドカップをサポートしているスイスのファッション企業、ウブロのショウウィンドウです。抜け目がありません。
写真6 コンゴウフグ
写真7 ウブロのサッカー応援飾り
サッカーボールは6角形と5角形の皮を縫い合わせて丸みを持たせています。丸いフグのお腹にも同じ模様がみられます。サッカーボールと自然のフグとが同じ幾何学を共有しているとは!ユークリッド万歳!
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