「見よう見まねの俳句」考
俳句は申すまでもなく5、7、5の17文字からなる短詩です。5文字あるいは7文字の日本語は口調よく音を連ねることができます。芭蕉の「古池や 蛙飛び込む 水の音」を口ずさめば明らかです。心に響くものに出会うと素人でも一句ひねりたくなるのが俳句の気安さです。
私は年のせいかトイレが近くなり、朝6時頃に目が覚めます。東に面した窓(マンションの4階)から空を眺めると遠方の赤から、やや白味を帯びて後濃い青色に変化します。太陽光と空気分子との相互作用による見事なパーフォーマンスです(日々雑感18参照)。見飽きることがありません。
太陽は画面中央のやや右よりから登ります。色彩は遠方の赤色から上空に向かって濃い青色に移っていきます。赤と青の中間領域はうす白く見えます。中間では赤と青が半々の強度になるからです。色彩の段階的移行は空気分子によるレーレイ散乱によります。
この空を俳句で表せないかと誘惑にかられます。ふと浮かんだのは次の句でした。
青空に 赤滲ませる 日の出まえ
散文調だな、これではだめだ。「青空」は季語ではないし、「赤」は言葉に深みがない。そこで、ネットを使って、「俳句 青空」で検索すると出てきました。
秋天に われがぐんぐん ぐんぐんと 高浜虚子
澄んだ青空にぐんぐんと引き込まれていく気分を表しています。そうだ、「青空」の代わりに「秋天」にしよう。これで季語も入ります。
次に「朝焼け」を検索するとありました。
初冬の旅 朝焼けの 紅濃ゆく 芝原康佳
「赤」の代わりに「紅」にしよう。出来上がった「見よう見まねの句」は:
秋天に 紅にじませる 日の出かな 恵
先人の肩を借りて少しは俳句に近づけたのかなと自画自賛。
最後に私の好きな俳句を再掲します。映画監督五所平之助の句です(日々雑感1)。
生きることは 一筋がよし 寒椿
追記
二刀流に挑んだ大谷選手、大輪の花を咲かせました。アメリカンリーグのMVP、しかも満票でした。
写真2は全身が躍動する大谷選手の美しい投球フォームです。中でも肩から指先までの腕の長さが目につきます。身長192 cmという背丈に見合う腕の長さです。
すらっとした体のどこに160 km/hの剛速球と143 mの最長飛距離のホームランを可能にする力がこもっているのでしょうか。その背景にある物理を探ってみます(図1)。
子どものときに棒を振り回した経験がおありでしょうか。棒は先ほど速い速度で回転します(図1)。ここで棒を腕とみなしてみます。破線OAは腕、肩の関節は赤〇印です。肩を中心に腕を振り回すと腕OAはOBに移ります。腕の位置が1、2、3と先に行くほど腕の速度はV1 、V2 、V3 と速くなります。
赤丸は肩の関節を表す。腕OAを一定の回転速度で振り回し位置 OBに来たとします。腕OBは肩関節(赤丸)から1、2、3と離れるにしたがって腕の回転速度はV1 、V2 、V3 と速くなります。
長い腕の大谷選手は投げるときの腕の速度、打つときのバットの速度が最高のV3となります。それに対して腕の短い選手はV1 、V2 に留まります。この差が大谷選手をMVPに導いた要因だと思います*。
筋肉の力とか、柔軟な関節の動きとかは長い腕があってこそ初めてその効果が発揮されます。
*時速150 km/h の投手の腕が6.25 cmだけ長くなると160 km/hの球を投げることができます。大谷選手の腕の長さを1 mとしました。計算は次の通りです。
100cm-100cm×(150/160)= 6.25cm
野球のテレビ中継で、ピンチになると捕手が投手に腕を振って投げるようにサインをおくる場面に出会います。それは腕を長く伸ばすことにより少しでも早い球を投げるためです。